「はい、どうぞ。部長はブラックでしたよね?」
「ああ。ありがとう」
茉莉花は、ソファに座る優樹の前にコーヒーカップを置くと、自分はローテーブルを挟んだ反対側の床に正座した。
肩を並べて座るのは、まだ抵抗があるのかもしれないと思い、優樹は茉莉花に声をかける。
「俺がそっちに代わるから、君がソファに座って」
「いえ。いつもこうやって、ペタンって床に座るのが好きなんです。このラグも、ふわふわで触り心地いいので」
「そうか。じゃあせめて足を崩したら?」
「ふふ、大丈夫です。それより部長、この桜貝なんですけど」
そう言って茉莉花は身を乗り出し、ローテーブルに飾った貝に手を伸ばした。
「夕べあのお店のホームページを見ていたら、拾った桜貝を持ち込んで、オーダーメイドでアクセサリーにしてくれるみたいなんです」
「へえ、そうなのか?」
「はい。これがその紹介ページなんですけど、ピアスやブレスレット、ネックレスに指輪もあって、どれも素敵で。ほら」
茉莉花はスマートフォンの画面を見せる。
「こんなに綺麗に仕上がるんだ。じゃあ、この桜貝も頼めるんじゃないか?」
「どうでしょう。端っこが欠けてたりするから、ダメかも……」
「今度持って行って、一緒に相談しようか」
「いいんですか?」
茉莉花はパッと顔を輝かせた。
「もちろん、いいですとも」
おどけてそう言うと、茉莉花はふふっと笑う。
「はい。じゃあ今度、相談の予約入れておきますね」
「ああ」
嬉しそうな顔で座り直した茉莉花は、次の瞬間、困ったように眉根を寄せて固まった。
「ん? どうした?」
「足が……、しびれちゃって」
足を崩したら?と勧めても、大丈夫だと正座をしたままだったからだろう。
優樹は立ち上がると、茉莉花を抱き上げてソファに運ぶ。
そっと座らせてから手を離そうとすると、茉莉花がギュッと抱きついてきた。
「ダメ、動くとしびれちゃう」
「そうか、分かった」
しばらくそのままで、茉莉花が落ち着くのを待つ。
だが優樹は、意図せず茉莉花に抱きしめられたままの状態に、次第にドキドキし始めた。
細い腕で必死にしがみついてくる茉莉花の身体は柔らかく、頬に触れる髪からふわりと良い香りが漂う。
互いの身体は密着し、優樹は緊張で固くなった。
思わず茉莉花の背中に手を回し、ギュッと強く抱きしめる。
「ダメ……動いちゃ」
耳元でささやかれ、ドクンと心臓が音を立てた。
しばらくするとようやく痛みが去ったのか、茉莉花がゆっくりと身体の力を抜く。
「ふう、痛かった。あ! すみません、部長」
慌てて身を引こうとする茉莉花を、優樹は優しく抱きしめ、耳元でささやいた。
「俺は君が好きだ」
「えっ……」
「それだけは忘れないで。いつまでも待つから、君の気持ちを」
茉莉花の髪をさらりと指で梳くと、頭を抱き寄せてそっと耳元に口づける。
スッと茉莉花から離れると、ソファから立ち上がった。
「そろそろ帰るよ。コーヒーごちそうさま。ゆっくり休んで」
「あ、はい」
茉莉花は半ば放心したように顔を上げる。
「おやすみ」
「おやすみ、なさい」
優樹は茉莉花に小さく微笑むと、そのまま部屋をあとにした。
「ああ。ありがとう」
茉莉花は、ソファに座る優樹の前にコーヒーカップを置くと、自分はローテーブルを挟んだ反対側の床に正座した。
肩を並べて座るのは、まだ抵抗があるのかもしれないと思い、優樹は茉莉花に声をかける。
「俺がそっちに代わるから、君がソファに座って」
「いえ。いつもこうやって、ペタンって床に座るのが好きなんです。このラグも、ふわふわで触り心地いいので」
「そうか。じゃあせめて足を崩したら?」
「ふふ、大丈夫です。それより部長、この桜貝なんですけど」
そう言って茉莉花は身を乗り出し、ローテーブルに飾った貝に手を伸ばした。
「夕べあのお店のホームページを見ていたら、拾った桜貝を持ち込んで、オーダーメイドでアクセサリーにしてくれるみたいなんです」
「へえ、そうなのか?」
「はい。これがその紹介ページなんですけど、ピアスやブレスレット、ネックレスに指輪もあって、どれも素敵で。ほら」
茉莉花はスマートフォンの画面を見せる。
「こんなに綺麗に仕上がるんだ。じゃあ、この桜貝も頼めるんじゃないか?」
「どうでしょう。端っこが欠けてたりするから、ダメかも……」
「今度持って行って、一緒に相談しようか」
「いいんですか?」
茉莉花はパッと顔を輝かせた。
「もちろん、いいですとも」
おどけてそう言うと、茉莉花はふふっと笑う。
「はい。じゃあ今度、相談の予約入れておきますね」
「ああ」
嬉しそうな顔で座り直した茉莉花は、次の瞬間、困ったように眉根を寄せて固まった。
「ん? どうした?」
「足が……、しびれちゃって」
足を崩したら?と勧めても、大丈夫だと正座をしたままだったからだろう。
優樹は立ち上がると、茉莉花を抱き上げてソファに運ぶ。
そっと座らせてから手を離そうとすると、茉莉花がギュッと抱きついてきた。
「ダメ、動くとしびれちゃう」
「そうか、分かった」
しばらくそのままで、茉莉花が落ち着くのを待つ。
だが優樹は、意図せず茉莉花に抱きしめられたままの状態に、次第にドキドキし始めた。
細い腕で必死にしがみついてくる茉莉花の身体は柔らかく、頬に触れる髪からふわりと良い香りが漂う。
互いの身体は密着し、優樹は緊張で固くなった。
思わず茉莉花の背中に手を回し、ギュッと強く抱きしめる。
「ダメ……動いちゃ」
耳元でささやかれ、ドクンと心臓が音を立てた。
しばらくするとようやく痛みが去ったのか、茉莉花がゆっくりと身体の力を抜く。
「ふう、痛かった。あ! すみません、部長」
慌てて身を引こうとする茉莉花を、優樹は優しく抱きしめ、耳元でささやいた。
「俺は君が好きだ」
「えっ……」
「それだけは忘れないで。いつまでも待つから、君の気持ちを」
茉莉花の髪をさらりと指で梳くと、頭を抱き寄せてそっと耳元に口づける。
スッと茉莉花から離れると、ソファから立ち上がった。
「そろそろ帰るよ。コーヒーごちそうさま。ゆっくり休んで」
「あ、はい」
茉莉花は半ば放心したように顔を上げる。
「おやすみ」
「おやすみ、なさい」
優樹は茉莉花に小さく微笑むと、そのまま部屋をあとにした。



