「部長、送ってくださってありがとうございました。お食事も美味しかったです」
「ああ。俺も楽しかった」

食事のあと、優樹は茉莉花をマンションまで送り届けた。

「戸締まりを忘れずに。おやすみ」
「はい、おやすみなさい」

茉莉花ははにかんだ笑みを見せてから、背を向ける。
と、ピタリと足を止めた。

どうしたのかと思っていると、茉莉花はそっと優樹を振り返る。

「あの、部長……」
「ん? どうした」
「お時間あれば、部屋でコーヒーでも……。いかがですか?」

えっ、と優樹は驚いた。

「いいのか? ひとり暮らしの部屋に、夜遅くに……」
「ダメでしたか?」
「いや、大丈夫だけど」

すると茉莉花は、にこっと笑いかけてくる。

「狭い部屋ですけど、よかったら」
「ああ、うん。それなら少しだけ、お邪魔します」
「はい」

優樹はドキドキしながら、茉莉花についてエレベーターに乗った。