「個室がある和食のお店でもいいかな? クライアントとの会食でよく利用するんだけど、なかなかいい店なんだ」

カフェを出ると、優樹は茉莉花に尋ねる。

「はい、もちろんです」
「じゃあ、行こう」

優樹は、さり気なく茉莉花の手を取って歩き出す。

(会社の人に見つからないかな)

茉莉花は内心ドキドキしながら、優樹の身体に隠れるようにピタリと身を寄せる。

優樹は少し驚いたように茉莉花を見ると、一度手を離し、指と指を絡めてギュッと握った。

え……と、茉莉花は身を固くする。

(部長、いつもクールでスマートなのに、こんなこともするんだ。なんだか意外)

けれど決して嫌ではなく、むしろ嬉しくて。
茉莉花はさっきとは違う意味でドキドキと胸を高鳴らせていた。