そろそろ帰ろうと、昨日車を停めたパーキングに向かう。
途中で茉莉花は、ふと目に入ったアクセサリーショップの前で足を止めた。

「部長、桜貝のアクセサリーですって」
「ほんとだ、珍しいな。入ってみるか」
「はい」

店内は、綺麗な色の桜貝を使ったピアスやネックレス、ブレスレッドなどが並んでいた。

「とっても素敵。透き通るような色合いと、天然の桜色が繊細ですね」
「ああ。1つとして同じものはないのだろうな」
「本当に。見ているだけでうっとりします」

じっくり1つ1つに目を向けていた茉莉花は、ふっくらしたフォルムの艷やかな桜貝のネックレスに目を留めた。

「綺麗……」

小さく呟いて見とれる茉莉花に、優樹は聞いてみた。

「俺から贈らせてもらってもいいか?」
「え?」
「俺からの最初のプレゼントとして、君にこのネックレスを贈りたい。迷惑でなければ」

茉莉花は、照れたような笑みを浮かべて頷く。
優樹はスタッフにラッピングとお会計を頼んだ。

「俺から君へ。受け取ってほしい」
「ありがとうございます、大切にします」

優樹が差し出した小さな箱を、茉莉花は大事に両手で受け取る。

「あの、月曜に会社に着けて行ってもいいですか?」
「ああ。俺にも見せてほしい。きっと似合うと思う」
「はい」

嬉しそうに箱を見つめたままの茉莉花に微笑むと、優樹はさり気なく手を繋いで歩き出す。
茉莉花は左手にプレゼントを、右手で優樹の手をキュッと握ったまま、頬を桜色に染めて歩いていた。