やがて開演のアナウンスがあり、人々のざわめきが消える。
茉莉花もわくわくと空を見上げた。

ヒューという音が聞こえたあと、夜空にパッと大輪の花火が鮮やかに花開く。

「わあっ、綺麗……」

茉莉花が感激の面持ちで呟き、優樹も頬を緩めた。
次々と打ち上がる花火に、茉莉花はうっとりと見とれている。

澄んだ瞳に花火を映す茉莉花の横顔は美しく、優樹は目が離せなくなった。

「あっ、水中花火! 見て、部長。とっても素敵!」

さり気なく腕に手を添えられて、優樹はドキッとする。

「ああ、見事だな」
「水面に鏡映しになって、幻想的ですね。海に咲く花……」

浴衣姿で呟く茉莉花の言葉は、優樹の胸に切ない余韻を残した。
夜空を次々と彩る花火に、茉莉花への気持ちも込み上げてくる。

左腕に添えられたままの茉莉花の右手に、優樹はそっと自分の手を重ねた。
茉莉花がふと我に返って、優樹を振り仰ぐ。
優樹は茉莉花に優しく微笑むと、また夜空を見上げた。
茉莉花も視線を移し、言葉もなく二人で花火に心を寄せる。
二人の距離も縮まるのを感じて、優樹は茉莉花の手をキュッと握った。