「ありがとうございました。花火楽しんで来てくださいね」

笑顔でお客様にドリンクを渡して見送っていると、「ここにいたのか」と優樹が現れた。

「清水さんが浴衣で接客してくれるから、繁盛しちゃって」

若いバイトの男の子がそう言って笑う。

「清水さん、あとは大丈夫ですから。ありがとうございました」

そう言われて、茉莉花は優樹と店内に戻った。
浴衣の着付けサービスを予約したお客様が来店し、優樹は予約を確認しながら受付をする。
茉莉花が女性をバックオフィスに案内した。

「予約のトラブルもなさそうですね」
「そうだな、安心した」

最後の一人の受付を済ませると、優樹はSNSを更新してパソコンを閉じる。

「店内もかなり混雑してきたな。そろそろ引きあげようか」
「そうですね。オーナーが戻って来られたら,挨拶して失礼しましょうか」

帰り支度をしていると、最後の着付けを終えたオーナーが店内に戻って来た。

「それでは我々はこれで」

二人で店長とオーナーに挨拶する。
オーナーは店の外まで見送りに出た。

「今夜はありがとうございました。おかげさまで、とってもお客様に喜ばれました。お二人も花火大会、楽しんでいらして。白瀬さん、清水さんから目を離さないようにね。こんな綺麗な浴衣姿の清水さん、すぐにナンパされちゃうわ。混雑してるから、痴漢も多いのよ。気をつけて」

真剣にそう言うオーナーに、茉莉花はひえっと身を固くする。
確かに裏通りのここですら、普段よりもかなり人通りが激しい。

「分かりました、気をつけます。それではオーナー、このあともお忙しいでしょうけど、お身体無理されませんように」
「ありがとう! 行ってらっしゃい」