業務をこなしてしばらくすると、鎌倉のカフェのオーナーから電話がかかってきた。

「お世話になっております。オーナー、どうかされましたか?」

茉莉花が尋ねると、電話口の向こうでオーナーは『実は急に思いついたんだけど……』と切り出す。

『今週の金曜日の花火大会でね、浴衣の着付けサービスをしてはどうかなって。夕方カフェに来てもらって、食事の前に私が着付けをするの。で、そのまま花火大会へ行ってもらう。どうかしら?』
「それはいいですね。オーナー、着付けが出来るんですね」
『そうなのよ。毎年花火大会で、浴衣が着崩れちゃった女の子に直してあげてたんだけどね。今年は最初から着付けてあげようと思って。但し、浴衣は自分で持ってきてもらって、カフェで食事をしてくれるって条件で』
「ええ、喜ばれると思います」
『そう? それならやってみたいんだけど、問題は告知と予約の取り方なのよ。ホームページでそういうお申込みフォームって、作れるのかしら?』

ああ、なるほど、と茉莉花は相槌を打つ。

「でしたら、これから白瀬に相談しますので、少しお時間いただけますか? こちらから折り返しますので」
『ええ、お待ちしてます』

では後ほど、と通話を終えると、茉莉花は早速優樹に相談する。

「ホームページで予約を取るんだな、分かった。会議室でオーナーと通話しながら作業しよう」
「はい、よろしくお願いします」

ノートパソコンを手に、二人で会議室に向かった。