「こちらに案をまとめました。女性のライフスタイルに合わせて必要な情報や、便利な機能を挙げています。朝起きてから夜寝るまでの時系列で並べました。まずはアラームから。単に音が鳴る目覚ましではなく、レム睡眠とノンレム睡眠のゆらぎに合わせて、何段階かに分けて心地よい音楽が流れるものです」
「へえ、いいですね。スヌーズで静かな音楽からだんだん明るい音楽になったら、すっきり起きられそう。私、朝が苦手だから助かります」

戸田が茉莉花に笑顔を向ける。

「あとは、新聞の代わりになるニューストピックスですね。ユーザーの好みに合わせて芸能やスポーツなど、興味のある話題がサジェストされます。それから女性ならではの生理周期と、高気圧や低気圧、気温や湿度、花粉や黄砂、降水確率もパッと分かりやすく表示されます」
「えー、助かる! 爆弾低気圧の時は頭痛薬飲まなきゃいけないのよね、私。花粉症だからマスクが必要かどうかも気になるし」

内野の言葉に、戸田もうんうんと頷いた。

「それから朝食やお弁当作りの為のメニューの提案、通勤電車の中で音楽を聴いたりスケジュールをチェックしたり。ランチタイムはカロリー計算をしてくれて、夜はおすすめのレストランやバーを検索出来ます。そして休日用にはまた別の機能をまとめました。ヨガやウォーキングに役立つものや、カフェやオンラインショップ、読書や料理やガーデニングなど。趣味を登録しておけば、自分好みの情報が得られる仕組みです」

茉莉花は資料から顔を上げて二人に視線を移す。

「イメージは、『あなたが作り上げるアプリ』といったところでしょうか。その人にとって欠かせないライフハックとなるよう、カスタマイズ出来ます。日常生活がより豊かに、楽しくなるように」

なるほど、といったように内野と戸田は何度も頷いた。
続いて優樹が別の資料を差し出す。

「こちらはデザインの一例です。テーマカラーを選んで設定していただくと、どのページもそれで統一されます。基本的には優しい色合いですね。ピンク、水色、オレンジ、白、紫、ブラウンなどです。それからページごとのデザインもこのようなイメージでいかがでしょうか? 例えばこのヘルスチェックのページは、その日の体重や体温、歩いた歩数や食事のカロリーが表示されるページです」
「素敵! このイラストの女性、自分の理想って感じがしますね」
「はい。テーマカラーごとにイラストのテイストも変わりますので、お好みのキャラクターを選んでいただけます。コメントの口調もそれぞれ違います」
「おもしろーい! 内野さんなら、バリバリキャリアウーマン設定ですよね。今日もやるぞー! みたいな」

戸田が笑いながらそう言うと、内野はお返しとばかりに別のキャラクターを選ぶ。

「戸田ちゃんはこれよね。ぽよーんとしてて、ランチは何にしようかなー? って」
「あはは! 確かに。毎日そればっかり考えてます。誰か決めてーって」
「それならこのアプリ、頼りになるわね」
「はい! 早く使いたいなあ」

二人の反応に、優樹も茉莉花も顔を見合わせて頷く。
おおむねこの方向で進め、次回は細かい点を詰めていこうと打ち合わせは終了した。