「茉莉花ー、おはよう!」
「おはよう、沙和ちゃん」

次の日。
いつものように元気に出社して来た沙和が、早速茉莉花に顔を寄せた。

「昨日、打ち合わせのあと直帰になったんだね。茉莉花が会社に戻って来たら、一緒にご飯でも行こうと思ってたんだよ。ほら、ロンリーバースデーになっちゃうからさ」

声を潜めて話しかけてきた沙和に、茉莉花は慌てて笑顔を取り繕う。

「そんな、気を遣ってくれてありがとう」
「大丈夫だったの? 一人寂しいバースデーは」
「大丈夫。ほら、沙和ちゃんからもらったアロマオイルと入浴剤で、うっとり優雅な気分になれたから。ありがとね」

更には優樹から贈られた真っ白なバラも、茉莉花のひとり暮らしの部屋を華やかに彩ってくれていた。

「そっか、それならよかった。26歳おめでとう、茉莉花」
「ありがとう!」

その時、ワイワイと先輩の女子社員たちも出社して来た。

「おはよう。あ、茉莉花ちゃん! 昨日は水族館デート楽しめた?」
「はい。セイウチが可愛かったです」
「そうなんだー。ディナーはどこで? プレゼントもらった?」
「えっと、ホテルのフレンチレストランで、白いバラの花束を……」
「おおー。やるねえ、優くん」

恥ずかしさに真っ赤になるが、いつもよりスラスラと答えることが出来た。

「そろそろ朝礼始めるぞー」

小澤の声がして、皆は立ち上がる。
茉莉花も部屋の奥の小澤と優樹に目を向けた。

いつものように爽やかな笑顔で話をする小澤と、その隣でキリッとした表情を浮かべている優樹。

茉莉花はそんな二人を見ているうちに、頬が赤くなる。
だがそれが、二人のどちらに対してなのかが分からなくなっていた。