二人並んで電車に揺られ、鎌倉に向かう。

「えっと、ファーストコンタクトの様子はどうだった? クライアントはどんな方?」

優樹の質問に、茉莉花は真剣に答える。

「はい。実はこれから行くカフェは、私が休日にあちこちのカフェ巡りをしていた時に立ち寄ったお店なんです。そこでオーナーと店長が私に気さくに話しかけてくださって、しばらくおしゃべりしました。お料理もデザートも美味しくて、盛りつけも凝っていて。私が写真を撮っていたら、SNSで話題になったらもっとお客様も増えるかしらねってオーナーがおっしゃって。家具を買い換えて雰囲気を良くしたり、メニューも見直したいって流れから、私がコンサルタント会社に勤めていることを話したら、ぜひお願いしたいと」
「そうだったのか。なるほど、よく分かった。それならある程度の信頼関係は築けているな」
「そうだといいのですが」
「大丈夫だ。今日もその時と変わらない雰囲気で話をすればいい」
「はい、分かりました」

茉莉花が頷くと、優樹は腕時計に目を落とした。

「時間は私が気にかけておく。何時までに終えればいいかな?」
「いえ、特に決めていません。何も指定されなかったので」
「終わり次第ってやつか。分かった、なるべく早く終えられるようにがんばろう」
「えっと、はい」

戸惑った様子の茉莉花に、優樹は「大丈夫だ」と大きく頷いてみせた。