カチャッと玄関の鍵が開く音がしたのは、23時になろうとする頃。
(あ、帰って来た!)
ずっと待ちわびていたその瞬間が訪れて、茉莉花のドキドキは最高潮に達する。
「え……」
玄関から小さく呟く優樹の声がした。
恐らく茉莉花の靴と明るい部屋を見て、驚いているのだろう。
しばしの静けさのあと、急にバタバタと足音がした。
「茉莉花!?」
そう言ってリビングに飛び込んできた優樹に、茉莉花は満面の笑みで抱きついた。
「おかえりなさい、優くん」
「茉莉花、本当に?」
「うん! サプライズのお返し。どう? 驚いた?」
「ああ、腰が抜けるかと思った」
「そんなに?」
呆然としたあと、優樹はようやく実感が湧いたように茉莉花を抱きしめる。
「茉莉花、会いたかった」
「私も」
「ありがとう、来てくれて」
「ううん、黙っててごめんなさい。腰が抜けなくてよかった」
「ははっ、そうだな。でもどうして今日? 明日じゃなかったのか?」
「今夜は織姫も彦星に会える日でしょ? それに8日になった瞬間に、優くんにおめでとうを言いたかったの」
「そうか、ありがとう茉莉花」
どれくらいそうやって抱きしめ合っていただろう。
ようやく身体を離すと、優樹はダイニングテーブルに並べられた食事に驚いた。
「これ、全部茉莉花が作ってくれたのか?」
「そう。だてにお料理教室に通ってないもん。バースデーケーキも冷蔵庫にあるからね」
「すごいごちそうだな。早速いただいてもいいか?」
「うん!」
二人で向かい合って座り、ワインで乾杯する。
ビーフシチューやサーモンマリネ、キッシュやチーズフォンデュなど、優樹はパクパクと美味しそうに平らげた。
「優くん、あの」
ソファに並んで座って食後のコーヒーを飲みながら、茉莉花はそっと聞いてみる。
「ひょっとして、あのお花って?」
「え? あっ……」
茉莉花の視線の先を追うと、優樹は気まずそうに顔をしかめた。
「いや、その。花屋の前を通りかかったら『茉莉花』って書いてあって、買わずにはいられなかった。茉莉花がいない毎日を、この花に癒やされて。茉莉花は寂しいなんて泣きごとを言わないのに、男の俺がそんなことでどうするって、恥ずかしくて言えなくて……。明日会ったら真っ先に、余裕ぶって上手いこと切り出そうって考えてた」
「そうだったの。優くんがそんなこと思うなんて、なんだか意外」
「ごめん、幻滅したか?」
「ううん、嬉しかった。けどちょっと、私まで恥ずかしくなって」
「いや、俺の方が何万倍も恥ずかしい」
そう言って片手で顔を覆う優樹に、茉莉花はふふっと微笑む。
「こんな優くん、初めて。大好き」
チュッと頬にキスをすると、優樹は顔から火が出そうなほど真っ赤になった。
「茉莉花、ちょっと……。ごめん、勘弁して」
「あはは! 可愛い」
「なにをー?」
「きゃー! オオカミ」
ガバッと抱きついてくる優樹を、茉莉花は笑いながらよける。
だがすぐにつかまえられ、ギュッと強く抱きしめられた。
「茉莉花、愛してる。どんな時も、会えなくても、ずっと茉莉花だけを」
「私も。優くんが大好きです」
ささやいて抱きしめ合う。
時間も距離も飛び越えて、互いの絆はどんどん深まるばかりだった。
(あ、帰って来た!)
ずっと待ちわびていたその瞬間が訪れて、茉莉花のドキドキは最高潮に達する。
「え……」
玄関から小さく呟く優樹の声がした。
恐らく茉莉花の靴と明るい部屋を見て、驚いているのだろう。
しばしの静けさのあと、急にバタバタと足音がした。
「茉莉花!?」
そう言ってリビングに飛び込んできた優樹に、茉莉花は満面の笑みで抱きついた。
「おかえりなさい、優くん」
「茉莉花、本当に?」
「うん! サプライズのお返し。どう? 驚いた?」
「ああ、腰が抜けるかと思った」
「そんなに?」
呆然としたあと、優樹はようやく実感が湧いたように茉莉花を抱きしめる。
「茉莉花、会いたかった」
「私も」
「ありがとう、来てくれて」
「ううん、黙っててごめんなさい。腰が抜けなくてよかった」
「ははっ、そうだな。でもどうして今日? 明日じゃなかったのか?」
「今夜は織姫も彦星に会える日でしょ? それに8日になった瞬間に、優くんにおめでとうを言いたかったの」
「そうか、ありがとう茉莉花」
どれくらいそうやって抱きしめ合っていただろう。
ようやく身体を離すと、優樹はダイニングテーブルに並べられた食事に驚いた。
「これ、全部茉莉花が作ってくれたのか?」
「そう。だてにお料理教室に通ってないもん。バースデーケーキも冷蔵庫にあるからね」
「すごいごちそうだな。早速いただいてもいいか?」
「うん!」
二人で向かい合って座り、ワインで乾杯する。
ビーフシチューやサーモンマリネ、キッシュやチーズフォンデュなど、優樹はパクパクと美味しそうに平らげた。
「優くん、あの」
ソファに並んで座って食後のコーヒーを飲みながら、茉莉花はそっと聞いてみる。
「ひょっとして、あのお花って?」
「え? あっ……」
茉莉花の視線の先を追うと、優樹は気まずそうに顔をしかめた。
「いや、その。花屋の前を通りかかったら『茉莉花』って書いてあって、買わずにはいられなかった。茉莉花がいない毎日を、この花に癒やされて。茉莉花は寂しいなんて泣きごとを言わないのに、男の俺がそんなことでどうするって、恥ずかしくて言えなくて……。明日会ったら真っ先に、余裕ぶって上手いこと切り出そうって考えてた」
「そうだったの。優くんがそんなこと思うなんて、なんだか意外」
「ごめん、幻滅したか?」
「ううん、嬉しかった。けどちょっと、私まで恥ずかしくなって」
「いや、俺の方が何万倍も恥ずかしい」
そう言って片手で顔を覆う優樹に、茉莉花はふふっと微笑む。
「こんな優くん、初めて。大好き」
チュッと頬にキスをすると、優樹は顔から火が出そうなほど真っ赤になった。
「茉莉花、ちょっと……。ごめん、勘弁して」
「あはは! 可愛い」
「なにをー?」
「きゃー! オオカミ」
ガバッと抱きついてくる優樹を、茉莉花は笑いながらよける。
だがすぐにつかまえられ、ギュッと強く抱きしめられた。
「茉莉花、愛してる。どんな時も、会えなくても、ずっと茉莉花だけを」
「私も。優くんが大好きです」
ささやいて抱きしめ合う。
時間も距離も飛び越えて、互いの絆はどんどん深まるばかりだった。



