パッと明るくなったリビング。
女性の服が脱ぎ捨てられているのかも、と恐る恐る視線を上げると、予想もしていなかったものが目に飛び込んできて、茉莉花は息を呑んだ。

(これって……、もしかして)

壁際のラックの上に飾られていた真っ白な花。
純白の小さな花から甘く優美な香りが漂う。
これはきっと、香りの女王と言われるアラビアンジャスミン、別名茉莉花(まつりか)

(優くんが、これを……?)

そんなこと、ひと言も話していなかったし、今までこの部屋で見かけたこともなかった。

(優くんがこの花を買ったの? 私に内緒で育ててたの?)

自然と頬が緩む。
茉莉花という名前の花を、どんな気持ちで買ったのだろう。
毎日この花を見て、なにを思っていたのだろう。

そう考えると茉莉花は顔が熱くなってきた。

(優くん、早く会いたい)

切なさと幸せが込み上げてきて、茉莉花はまた泣きそうになった。