7月1日、茉莉花は部長の小澤に有給休暇の申請届を提出する。

「どうしてもこの日だけは! お願いします」

受け取った小澤は、書かれた7月8日の日付けを見てニヤリと笑う。

「行ってらっしゃーい。優樹によろしくな。お幸せに」
「ちょっと、部長。声が大きいですって」

茉莉花がアタフタした時、ふいに小澤のデスクの電話が鳴った。
応答した小澤が、急に焦ったように立ち上がる。

「俺もすぐに行く! しっかりな、華恵」

えっ!と茉莉花は驚く。

「部長、もしかして華恵さんが?」
「ああ、陣痛が始まった。これから病院に向かうそうだから、俺も行ってくる。悪いな」
「いいえ、早く行ってあげてください。どうか無事に産まれますように」
「ありがとう。じゃあみんな、あとはよろしく頼む」

お気をつけて!と、部署の皆で見送った。

それからは何度も時計を見上げつつ、ソワソワと仕事をする。
昼の3時を過ぎた時、待ちに待った連絡が来た。

「産まれたって、元気な女の子! 華恵さんも大丈夫だそうよ」

電話に出た先輩の言葉に、茉莉花たちも、わあ!と声を上げて喜び合う。

「よかったねえ。赤ちゃん、可愛いだろうね」
「お見舞いに行きたいね。週末、病院に面会に行けるかな?」
「みんなからのお祝いも考えようか」

早速わいわいと賑やかに盛り上がる。
話し合った結果、日曜日に茉莉花と沙和が部署の皆からのお祝いを持って面会に行くことになった。