週末。

約束通り再び上京して来た優樹と一緒に、茉莉花は鎌倉でお寺巡りをしていた。

「見つかるといいなあ」

探しているのは、『万華鏡』と呼ばれている品種の紫陽花。
中心から外側に向けて段々淡い色合いになるグラデーションが美しく、島根県でしか栽培されていないらしい。

「鎌倉のお寺で見かけたって噂があるんですよね。見てみたいなあ」

あちこちに咲き誇る美しい紫陽花を楽しみつつ『万華鏡』を探す。

「もしかして、見過ごしちゃったかな……」

そう呟いた時、優樹が茉莉花を呼んだ。

「茉莉花! これじゃないか?」
「えっ?」

駆け寄って、優樹の指差す先を見る。

「わあ、綺麗!」

華やかな青と水色のグラデーションで、透き通るような透明感のある紫陽花。
見る角度によって表情が変わり、芸術的で現実のものとは思えないほどの美しさ。
例えるなら、そう、万華鏡。

「こんなにも美しいなんて」
「ああ、本当に」
「万華鏡の花言葉って、『確かな絆』って言われてるそうです。優くんと一緒に見られて、とっても嬉しい」

花を見つめて微笑む茉莉花の清らかな横顔に、優樹は改めて恋に落ちていた。