「じゃあ、行ってくる」

翌朝。
ひと気のない早朝の新幹線のホームで、二人は向かい合った。

「気をつけて帰ってね。優くん、会いに来てくれてありがとう。とても素敵な誕生日になりました」
「俺も会えて嬉しかった。また週末な」

ええっ!?と茉莉花は驚く。

「週末も? 今回来たから、ナシになったんじゃないの?」
「それはそれ、これはこれだ。というより、俺が茉莉花に会いたいんだ。今回あまり時間が取れなかったから、週末はゆっくりデートしよう」
「はい!」

発車のベルが鳴る。
だが少しも寂しくはなかった。

「またな、茉莉花」
「はい。行ってらっしゃい」

静かなホームで優樹は茉莉花を抱き寄せ、優しくキスをする。
そのまま新幹線に乗り込み、互いに笑顔で別れた。

茉莉花は一度マンションの部屋に帰り、着替えてから出社する。

「おはよう、沙和ちゃん。夕べはごめんね」

出社してきた沙和に謝ると、沙和は笑顔で、と言うよりニヤニヤしながら首を振る。

「いいのよー。キュンキュンをごちそうさまでした」
「お恥ずかしい……。えっと、これ。優くんからなの。沙和ちゃんにって」
「えっ、なに?」

茉莉花は、ホテルのロゴ入りの紙袋を差し出す。
ケーキショップオリジナルの洋菓子の詰め合わせが入っていた。

「夕食をキャンセルさせてしまって申し訳ないって言ってた」
「そんな、いいのに。ありがとうございますって伝えておいて。それと、茉莉花のガードはしっかり務めますからって」

そう言って沙和はにっこり笑った。