「こんにちは。わあ、大盛況ですね」
鎌倉のカフェに入ると、平日にもかかわらず、店内はほぼ満席で賑わっていた。
「清水さん! いらっしゃい。おかげさまで嬉しい悲鳴よー」
店長が忙しそうにしながら笑いかけてくる。
「オーナーはバックオフィスにいるわ」
「分かりました。では打ち合わせしてきますね」
茉莉花は店長にそう言って、STAFF ONLYと書かれたドアを開けた。
優樹が関西に異動してから2ヶ月が経ち、茉莉花は一人でカフェとアプリの案件を担当していた。
寂しくないと言えば嘘になるが、優樹の「いつでも飛んで行くから」という言葉がお守りになり、茉莉花は毎日を笑顔で過ごせている。
なんとなく二人のルーティーンも決まってきて、2週間に1回は優樹と茉莉花が交互に会いに行く流れになっていた。
関西ではあちこちの観光名所を二人で回り、デートを楽しむ。
ゴールデンウィークも、茉莉花は関西で優樹と一緒に過ごした。
京都には何度も足を運び、古都の雰囲気を味わいながらじっくり見て回る。
神戸の水族館を訪れると、なんとシャチがいて、茉莉花は大興奮。
「かっこいい、優くんみたい!」としきりにはしゃぎ、どういうこと?と優樹は眉根を寄せていた。
会えない時間も茉莉花は前向きにとらえ、料理教室に通い始める。
週末は沙和と一緒に出かけることもあり、産休に入った華恵も交えてランチを楽しんだりもした。
「華恵さんのお腹の赤ちゃん、女の子なんですって! 産まれたら会いに行くの。楽しみ」
電話で優樹にそう話すと、優樹も『へえ、女の子か』と嬉しそうに言う。
『小澤のデレデレした顔が想像つくな』
「でしょう? もう既にデレデレで、仕事中もニヤけてる時あるの。メモ帳に名前の候補たくさん書いてあるし」
『おい、仕事してんのか? あいつ』
「ふふっ。あ、優くん。今度会った時、一緒に赤ちゃんのお祝い選んでもらってもいいですか?」
『もちろん。一緒に買いに行こう』
「はい!」
次に会うのは、茉莉花の誕生日が過ぎた週末、6月の第2土曜日。
その日にホテルへディナーを食べに行くことになっていた。
「じゃあね、優くん。会えるのを楽しみにしてます」
『ああ。誕生日プレゼント、何がいいか考えておいて』
「うーん、優くんに会えたらそれだけでいいです」
『そんなこと言わずに。俺が茉莉花に贈りたいんだ。じゃあ、俺が選んでもいいか?』
「はい、楽しみにしてますね」
『ああ』
おやすみなさい、と言って電話を切る。
(次に優くんに会う時は、私、27歳になってるんだ。ちょっとは大人っぽくなったって思われたいな)
デートに着て行く服を新しく買おうと、茉莉花は早くもわくわくしていた。
鎌倉のカフェに入ると、平日にもかかわらず、店内はほぼ満席で賑わっていた。
「清水さん! いらっしゃい。おかげさまで嬉しい悲鳴よー」
店長が忙しそうにしながら笑いかけてくる。
「オーナーはバックオフィスにいるわ」
「分かりました。では打ち合わせしてきますね」
茉莉花は店長にそう言って、STAFF ONLYと書かれたドアを開けた。
優樹が関西に異動してから2ヶ月が経ち、茉莉花は一人でカフェとアプリの案件を担当していた。
寂しくないと言えば嘘になるが、優樹の「いつでも飛んで行くから」という言葉がお守りになり、茉莉花は毎日を笑顔で過ごせている。
なんとなく二人のルーティーンも決まってきて、2週間に1回は優樹と茉莉花が交互に会いに行く流れになっていた。
関西ではあちこちの観光名所を二人で回り、デートを楽しむ。
ゴールデンウィークも、茉莉花は関西で優樹と一緒に過ごした。
京都には何度も足を運び、古都の雰囲気を味わいながらじっくり見て回る。
神戸の水族館を訪れると、なんとシャチがいて、茉莉花は大興奮。
「かっこいい、優くんみたい!」としきりにはしゃぎ、どういうこと?と優樹は眉根を寄せていた。
会えない時間も茉莉花は前向きにとらえ、料理教室に通い始める。
週末は沙和と一緒に出かけることもあり、産休に入った華恵も交えてランチを楽しんだりもした。
「華恵さんのお腹の赤ちゃん、女の子なんですって! 産まれたら会いに行くの。楽しみ」
電話で優樹にそう話すと、優樹も『へえ、女の子か』と嬉しそうに言う。
『小澤のデレデレした顔が想像つくな』
「でしょう? もう既にデレデレで、仕事中もニヤけてる時あるの。メモ帳に名前の候補たくさん書いてあるし」
『おい、仕事してんのか? あいつ』
「ふふっ。あ、優くん。今度会った時、一緒に赤ちゃんのお祝い選んでもらってもいいですか?」
『もちろん。一緒に買いに行こう』
「はい!」
次に会うのは、茉莉花の誕生日が過ぎた週末、6月の第2土曜日。
その日にホテルへディナーを食べに行くことになっていた。
「じゃあね、優くん。会えるのを楽しみにしてます」
『ああ。誕生日プレゼント、何がいいか考えておいて』
「うーん、優くんに会えたらそれだけでいいです」
『そんなこと言わずに。俺が茉莉花に贈りたいんだ。じゃあ、俺が選んでもいいか?』
「はい、楽しみにしてますね」
『ああ』
おやすみなさい、と言って電話を切る。
(次に優くんに会う時は、私、27歳になってるんだ。ちょっとは大人っぽくなったって思われたいな)
デートに着て行く服を新しく買おうと、茉莉花は早くもわくわくしていた。



