一人残されたホームで、茉莉花は呆然と立ち尽くす。

(もう、いいよね)

そう思った途端、一気に涙が込み上げてきた。

(優くん、優くん! 会いたい……)

切なさに声を震わせて泣き続ける。
通り過ぎる人たちの視線を感じて、ホームのベンチに座った。

(あ、これ)

何かを握らされた手を開いてみると、それは白い封筒だった。
中に入っていたのは、カードと新幹線のチケットと鍵。

(これって……?)

カードを開くと、優樹の綺麗な文字が並んでいた。
それすらも懐かしく愛おしくなり、また茉莉花は涙する。

『茉莉花へ

会いたくなったらこのチケットでいつでも会いに来て。
鍵は俺の部屋の合鍵。
失くさないように、桜貝のキーホルダーをつけておいた。

茉莉花、我慢しなくていい。
寂しくなったらいつでもそう言って。
たとえ真夜中だって飛んで行く。
車か、始発の新幹線か、飛行機か……
ちゃんとどれが一番早く会えるかを考えてから行く。

茉莉花、心から愛してる。
俺も茉莉花に愛されるような男になるから、見てろよ。

愛する茉莉花へ

優樹 』

茉莉花は思わず笑い出す。

(なあに? 真面目なのかボケてるのか、キザなのか不器用なのか、ワケ分かんない)

いつの間にか涙は止まっていた。
鍵につけられていた桜貝のキーホルダーを、目の高さに掲げる。

「綺麗……」

拾うと幸せが訪れると言われている桜貝。

(幸せになれるよね、私たち)

左手の指輪にそっと触れてから、茉莉花はふふっと微笑んだ。