「じゃあ、茉莉花。行ってくる」
「はい、行ってらっしゃい」
3月の最後の週末。
新幹線のホームで二人は向かい合った。
涙は見せない。
茉莉花はそう心に決めていた。
「茉莉花、戸締りに気をつけて」
「え? 今そんなこと言うの?」
「ああ、ごめん。そうだよな」
どうやら自分よりも優樹の方が感極まっているらしい。
そう思うと、茉莉花はクスッと笑みをもらした。
「優くんこそ、酔っ払って帰り道分からなくならないようにね」
「茉莉花もだぞ。あと、あんまり可愛い格好はするな。ナンパされたら指輪を見せろ」
「ふふっ、婚約指輪なのに魔除けみたいなこと言わないで。でもこの指輪があるから、寂しくない」
右手で指輪に触れてそう呟く茉莉花を、たまらず優樹は抱きしめる。
「月に2回は必ず会いに来る」
「はい。私も会いに行きます」
「関西でもたくさんデートしよう。行きたいところ、考えておいて」
「はい。京都にも神戸にも行きたいな」
耳元で語り合う二人に、無情な発車のベルが鳴った。
「優くん、もう乗らなきゃ」
「ああ」
そっと身体を離すと、一気に寂しさが込み上げてくる。
茉莉花はグッと唇を噛みしめてから顔を上げた。
「行ってらっしゃい。気をつけてね」
「茉莉花、これ」
「え?」
ふいに右手に何かを握らされ、茉莉花は視線を落とす。
優樹はそのまま茉莉花の手を引くと、唇にキスをした。
「愛してる」
最後にささやかれた言葉は茉莉花の心をしびれさせ、甘い余韻が耳に残る。
優樹が身を滑らせるように乗り込み、ドアが閉まった。
ゆっくりと列車は動き出す。
愛する人の姿を目に焼きつけるように。
二人は微笑み合って別れた。
「はい、行ってらっしゃい」
3月の最後の週末。
新幹線のホームで二人は向かい合った。
涙は見せない。
茉莉花はそう心に決めていた。
「茉莉花、戸締りに気をつけて」
「え? 今そんなこと言うの?」
「ああ、ごめん。そうだよな」
どうやら自分よりも優樹の方が感極まっているらしい。
そう思うと、茉莉花はクスッと笑みをもらした。
「優くんこそ、酔っ払って帰り道分からなくならないようにね」
「茉莉花もだぞ。あと、あんまり可愛い格好はするな。ナンパされたら指輪を見せろ」
「ふふっ、婚約指輪なのに魔除けみたいなこと言わないで。でもこの指輪があるから、寂しくない」
右手で指輪に触れてそう呟く茉莉花を、たまらず優樹は抱きしめる。
「月に2回は必ず会いに来る」
「はい。私も会いに行きます」
「関西でもたくさんデートしよう。行きたいところ、考えておいて」
「はい。京都にも神戸にも行きたいな」
耳元で語り合う二人に、無情な発車のベルが鳴った。
「優くん、もう乗らなきゃ」
「ああ」
そっと身体を離すと、一気に寂しさが込み上げてくる。
茉莉花はグッと唇を噛みしめてから顔を上げた。
「行ってらっしゃい。気をつけてね」
「茉莉花、これ」
「え?」
ふいに右手に何かを握らされ、茉莉花は視線を落とす。
優樹はそのまま茉莉花の手を引くと、唇にキスをした。
「愛してる」
最後にささやかれた言葉は茉莉花の心をしびれさせ、甘い余韻が耳に残る。
優樹が身を滑らせるように乗り込み、ドアが閉まった。
ゆっくりと列車は動き出す。
愛する人の姿を目に焼きつけるように。
二人は微笑み合って別れた。



