「ゆっくり考えてくれていい」

優樹の言葉に、茉莉花はしばらく時間をもらうことにした。

そうしているうちにも、優樹は後任の小澤への引き継ぎで忙しくなる。
担当していた鎌倉のカフェとアプリ開発のIT企業へも、茉莉花と一緒に挨拶に訪れた。

「寂しくなるわね。でも清水さんがいてくれるから、心強いわ」

そう言われて、茉莉花は笑顔を取り繕う。

(決めるなら、早くしないと。いつまでもこの状態ではいられない。優くんにも、会社にも)

焦りを隠せない茉莉花に、沙和が声をかける。

「茉莉花、こっちのことは気にしないで。茉莉花の担当してる案件は、私が引き継ぐから」
「ありがとう、沙和ちゃん」

小澤も華恵も、そうした方がいいと気にかけてくれる。

2月最後の日曜日。
今日こそ答えを出そうと決めて、茉莉花は優樹のマンションを訪れた。