「茉莉花、おいで」

シャワーを浴びてから寝室に行くと、ベッドで本を読んでいた優樹がいつものように声をかけてきた。
茉莉花がベッドに横になると、優樹は本をサイドテーブルに置き、照明を絞る。

「暗すぎるか?」
「ううん、大丈夫」

優樹も横になると、茉莉花の身体を胸に抱き寄せた。

「おやすみ、茉莉花」

チュッとおでこにキスをされて、茉莉花は優樹を見上げる。

「ん? どうかしたか?」

すぐ目の前にある、優しくて愛しい人の真っ直ぐな瞳。
信じよう、と茉莉花は決めた。

「抱いてください」

ハッと優樹が目を見開く。

「茉莉花? なにを……」
「私、あなたに愛されたいです。あなたになら、抱かれたい」

そう言って、ギュッと優樹に抱きついた。

「茉莉花、待て。これ以上はダメだ。離れないと、止められなくなる」

焦って身を引こうとする優樹を、茉莉花は更に強く抱きしめた。

「止めなくていいです。だから、お願い……」

そっと上目遣いに見つめると、目を見開いたままの優樹が顔つきを変えた。

「茉莉花……」

かすれた声で名を呼び、茉莉花を胸にかき抱く。
解き放たれた想いをぶつけるように、熱く唇を奪った。

「茉莉花、愛してる」
「んっ、私も……」

何度も繰り返されるキスに、茉莉花は何も考えられなくなる。
優樹は唇を離すと、茉莉花の白い首筋をキスでたどった。

いつの間にか茉莉花のバスローブの紐が解かれ、素肌の背中に優樹の温かく大きな手が触れる。
だが、怖さは感じない。
むしろ心地よさに、うっとりと身体の力が抜けた。

やがてスルリと肩からバスローブが落とされるが、身体は優樹と密着していて見られることはなく、恥ずかしさは感じなかった。

「茉莉花、好きだ」

優樹はうわ言のように呟きながら、茉莉花の肩に、鎖骨に、胸元にと、キスの雨を降らせる。

ふわふわと身体が浮いている気がして、ふう、と茉莉花は大きく息をつく。
すると優樹が再び唇に深くキスをしてきた。

「んっ……」

頭の中がぼんやりするほど、茉莉花はキスに溺れる。
優樹の右手がそっと茉莉花の胸に触れても、茉莉花は優樹に身体を預けたままだった。

優樹は茉莉花と肌を合わせたまま、茉莉花の様子をうかがう。
頬をピンクに染めて吐息をもらす茉莉花は、美しく艶めかしい。
キュッと胸の蕾をつまんだ刹那、茉莉花はピクンと身体をしならせた。

「んんっ」

パッと妖艶な色気が弾けて、優樹の理性を奪う。

「茉莉花……」

はあ、と大きく息をついた茉莉花は、必死で優樹にしがみついた。
優樹は茉莉花をグッと抱きしめたまま、その身体のあちこちに手を滑らせる。
身体を見られないことに安心したのか、茉莉花は力を抜いて優樹の愛撫に身を任せていた。

少しでも怖がらせたら、必ずそこでやめる。
優樹はそう決めていた。
だが茉莉花は、優樹に身を委ね、心を開き、最後まで優樹の身体を受け入れる。

「茉莉花、心から愛してる……」

耳元でささやき、茉莉花の奥深くまでゆっくりと繋がると、優樹はこぼれ落ちた綺麗な茉莉花の涙にそっとキスをした。