「メリークリスマス」

すっかりおなじみになったオーベルジュのレストランで、二人はワインで乾杯する。
店内は大きなクリスマスツリーが飾られ、いつもよりロマンチックな雰囲気だった。
照明も控えめで、キャンドルの灯りが二人を静かに照らす。

茉莉花は改めて優樹のかっこ良さに見とれ、これからのことを想像して胸がドキドキしていた。

（ちゃんと気持ちを伝えるんだ。今夜こそ、必ず）

まるで告白するかのように緊張が襲ってくる。
いや、告白以上かもしれない。

「茉莉花？ そんなにワイン飲んで大丈夫か？」

飲むペースが速くなっていたらしく、優樹が心配そうに尋ねてきた。

「大丈夫です」
「でも、酔いつぶれないでくれよな？」

どうやら優樹はそれが気になるらしい。

「平気。どんなに飲んでも酔いそうにないから」

むしろ酔いたい、と思いながら、グラスの中を飲み干す。

「茉莉花、そこまでにして。部屋で飲み直そう」

するとカウンターからシェフも笑顔で声をかけてきた。

「デザートもお部屋にご用意いたします。どうぞごゆっくりお召し上がりください」
「ありがとう」

優樹は茉莉花の手を取って立ち上がり、肩を抱きながら部屋へと向かった。