だがそのあと、茉莉花は新たな悩みを抱えることになった。
沙和のおかげで迷いはなくなった。
問題は、それをどう優樹に伝えるか、だ。

(もう大丈夫だと思いますので、試しにやってみませんか? なんて、そんな露骨に言えるはずもないし……)

では言葉ではなく、それとなく態度で誘ってみるか?

(いやいや。そんなの、やり方も分かんないよ)

常に頭の中はそのことでいっぱいだった。

いつものように優樹の部屋で過ごす週末。
夜、ベッドに入っても、茉莉花は悶々としていた。

「茉莉花? どうかしたか?」

隣に横たわる優樹が、怪訝そうに聞いてくる。

「ううん、あの……」

やっぱりどう切り出していいのか分からない。

うつむく茉莉花を、優樹は優しく抱き寄せた。

「何も気にしなくていい。ゆっくりおやすみ」
「はい、おやすみなさい」

顔を上げてそう言うと、優樹は茉莉花に微笑んでから、おでこにチュッとキスをする。

(どうしよう、ここから自然な流れでそうなったりしないかな?)

茉莉花は優樹の胸元に顔をうずめて、ギュッと抱きついてみた。

「どうした? 茉莉花。今日は甘えん坊だな」

ふっと笑みを含んでそう言い、優樹は茉莉花の頭をなでる。

(甘えん坊? それって、子どもみたいってことよね)

大人の雰囲気にはなれそうになく、茉莉花は再び悶々と悩み始めた。