生徒会室に着いた。
まだ朝ではあるけれども、僕のために集まってくれているとのことであった。

「入るよ」
「失礼します」

そこには、進学校らしいメンツが揃っていた。
八割くらいがメガネをかけていて真面目を絵に書いたような学生たち。
青いな、と思う。
どれだけ真面目に生きていても、ぶつかる壁はある。
これからが人生の本番だぞと、大人になった今なら思ってしまう。

そんな中でキリッと起立して背筋をピンと伸ばしたままこちらを睨みつけている女子がいた。
彼女だ、とすぐに気が付いたが、敢えて目を逸らす。

「今日から相談室に赴任しました、村越です。僕は非常勤なので非常に優秀な皆さんと顔を合わせることはこれきりだと思いますが、ご挨拶だけ失礼します」
「会長の高橋悠介です。代表で僕からみんなを紹介します」

手を出してくれたので、握り返した。
そして、次々に紹介される生徒会メンバー。
彩葉だけは、間違えようもなかった。

「この高橋と副会長の高遠の2高コンビが今年は優秀だとあちこちから評判で、いまから楽しみですよ」

と口を挟んだ、教頭先生。
確かに高橋君は生徒会長になるために生まれてきたような、5月の風のように爽やかな青年だったが、こういうやつが彩葉のことを好きになったり、彩葉が好きになったら嫌だなと思ってしまった。

ちょっとだけ、布石を打っておくか。

「高遠さん、君は随分いじけているね。どうかしたの?」

彼女は一瞬だけ驚いたようにこちらを向いた。
そしてすぐなんでもないという風にこちらを見て微笑んだ。