僕と教頭先生が並んで歩いていると、早速「新しい先生!?」と何人もの生徒に囲まれる。質問攻めにあう。主に女子生徒。

「こらこら、村越先生が困ってるだろう? 通してやりなさい」
「村越先生って言うんだ! 何の科目?」
「僕は相談室のカウンセラーだよ」
「そっか! それって保健室の隣だよね? 遊びに行くね」
「遊びだったら来ないで」
「え〜、なんかイケメンなのに性格きついんだけど」
「そうかな。真剣な話だったらいつでも聞くけど?」

僕が笑顔で応えると、一帯で女子たちのキャーっという声が上がる。
男子生徒たちには睨まれているし。
なんだこれ。

「村越先生、あまり生徒に勘違いさせる発言は……」
「え?」
「節度を持ってお願いいたします」

恋愛相談だと思われているということか?
めんどくさいなぁ。

「ではまた機会があったらね」

と僕は適当に片付けて、教頭先生の後をついて行く。

「一応うちはここいらでは進学校ですから、生徒会も自主性に任されて運営されていて。校則なんかも結構変わるんですよ」
「へぇ、すごいですね」
「最近入ったばかりの1年生の副会長でね。制服を自由化したいと動いてる生徒がいまして。彼女なんかは今年の首席合格で、とにかく理論的で大人びてますよ。確か前は東京に居たって言ってたかな」
「そうですか……」

と応えながら、きっとそんなの彼女しかいないだろうと胸を踊らせている自分がいることに気が付いた。