相談室のきみと、秘密の時間 番外編

「どうした?」

目の前にコーヒーを置きながら、慧悟さんは心配そうに顔を覗いてくる。

「ごめんね……私思い出しちゃって。あの時は、高一の時は自分のことばかりで。慧悟さんのこと何も気付けない子どもで」
「そんなことない。今の彩葉もあの時の彩葉も僕の大切な思い出だよ。ひとつだって無駄な時間はないし、全てが愛しくてたまらないんだ」
「あり……がとう。私もっと強くなって慧悟さんの隣に自信もっていられるようになるから」

こちらこそありがとうと慧悟さんは笑った。

「僕は彩葉の目に随分立派に見えてたみたいだけど、これからは弱いとこも沢山見せてしまうと思う」
「いいよ」

じゃあ遠慮なく、と言って慧悟さんは甘えたように後ろから私を強く抱き締めた。

「落ち着くなぁ」
「ふふ。幾らでもどうぞ」
「そんなこと言ってると襲うぞ」
「えっ」
「嘘だよ。まずは履修登録だろ?」

まずはって……。
まぁいいや。
集中集中と言い聞かせて、私は机の上に資料を置く。

「彩葉……窓の外見て」
「わぁ、桜たくさん散ってるね」
「ここの窓はね、季節によって色んなものが見えるんだ。そこが気に入って住んでる」
「私も季節が移ろうの見るの好き」
「彩葉はそうだと思ったから。半年とか来年とかでもいい。僕のこともう少し知ってそれでも彩葉が良かったら、ここに一緒に住もう?」

今度は私から、慧悟さんのことを強く抱きしめる番だった。
慧悟さんは優しく髪を撫でてくれる。
答えなんか、わざわざ言わなくても分かってくれるよね。

「慧悟さん、大好きっ」
「僕もだよ」
「来年も一緒にここで桜見ようね」
「あぁ、ずっと一緒だ」

私たちは窓辺で散りゆく桜を惜しみながら、いつまでも互いの温もりを感じていた。