あれから、一週間がたった。
式見と私は、相変わらずの関係で。
今日も〝友達〟と言う肩書のまま、デートまがいのことをしている。
「ねえ、それなに」
最寄りからちょっと離れたショッピングモール。そのフードコートで、二人分の水を持ってきた式見が言った。
私の前には野菜がたっぷりはさまったベーグルサンド。式見の前には、ポテトとテリヤキバーガー。
式見が席を離れている間に私は、一枚の写真をながめていた。
モデルの撮影が終わったあとに、柳原くんがくれた私と式見のツーショット写真。
「柳原くんがくれたの。あの時、写真撮ってくれてたんだって」
「ふうん」
式見に写真を渡す。それをぼんやりと見つめる式見。
「百里、笑ってない」
「えっ。そりゃそうでしょ」
だって、あの時は式見が突然現れて、動揺してたし。
「写真撮ろ。二人で」
そう言って、式見はスマホを取り出した。
インカメラにして、スマホを上に向ける。
「い、今?」
「当たり前。はい、笑って」
「そんなこと言われても」
こういう時、つくづく思う。
私って、アドリブ苦手なんだなって。
やっぱり、モデルは私には向いてないや。
「ねえ、百里」
「何?」
「あとで、イチゴミルクおごってあげよっか」
「えっ、ほんと?」
――ポコン。
スマホのシャッター音が、静かになった。
「笑ってる」
式見がニヤニヤ顔で見せてきた、スマホ画面。
そこには、イチゴミルクをおごってもらえると聞いて、笑顔になっている私と優しい笑みで私を見つめる式見がいた。
「ふはは、こうすればよかったのか。単純だね。百里って」
「……むかつく!」
本当に、イジワルなやつ。
ぜったいにこんなやつの恋人になんてなりたくない。
でも……いっしょにいて嬉しいって思っちゃうのは、たぶん私がこいつのことを好きだから。
好きだけど、恋人にはなりたくない。
こんな関係、ありなのかな。
「イチゴミルク、いらないの?」
「……いる!」
「うん、買ってあげるね」
そう言って、式見はテリヤキバーガーの包み紙をはがしはじめた。
春になると咲く『シキミ』っていう可愛い花があるらしい。
シキミの実には猛毒があるんだって。だからなのか、シキミの花の花言葉は『猛毒』。
そして、もう一つ。それは、『甘い誘惑』。
シキミは可愛らしい花をつける。それが独特の強い香りを放つことから、神聖な樹木として、神仏に備えられているんだって。
式見木蓮にぴったりの花言葉。
私たちの関係は、毒と解毒剤で出来ているのかもしれない。
これからも、ずっと。
おわり
式見と私は、相変わらずの関係で。
今日も〝友達〟と言う肩書のまま、デートまがいのことをしている。
「ねえ、それなに」
最寄りからちょっと離れたショッピングモール。そのフードコートで、二人分の水を持ってきた式見が言った。
私の前には野菜がたっぷりはさまったベーグルサンド。式見の前には、ポテトとテリヤキバーガー。
式見が席を離れている間に私は、一枚の写真をながめていた。
モデルの撮影が終わったあとに、柳原くんがくれた私と式見のツーショット写真。
「柳原くんがくれたの。あの時、写真撮ってくれてたんだって」
「ふうん」
式見に写真を渡す。それをぼんやりと見つめる式見。
「百里、笑ってない」
「えっ。そりゃそうでしょ」
だって、あの時は式見が突然現れて、動揺してたし。
「写真撮ろ。二人で」
そう言って、式見はスマホを取り出した。
インカメラにして、スマホを上に向ける。
「い、今?」
「当たり前。はい、笑って」
「そんなこと言われても」
こういう時、つくづく思う。
私って、アドリブ苦手なんだなって。
やっぱり、モデルは私には向いてないや。
「ねえ、百里」
「何?」
「あとで、イチゴミルクおごってあげよっか」
「えっ、ほんと?」
――ポコン。
スマホのシャッター音が、静かになった。
「笑ってる」
式見がニヤニヤ顔で見せてきた、スマホ画面。
そこには、イチゴミルクをおごってもらえると聞いて、笑顔になっている私と優しい笑みで私を見つめる式見がいた。
「ふはは、こうすればよかったのか。単純だね。百里って」
「……むかつく!」
本当に、イジワルなやつ。
ぜったいにこんなやつの恋人になんてなりたくない。
でも……いっしょにいて嬉しいって思っちゃうのは、たぶん私がこいつのことを好きだから。
好きだけど、恋人にはなりたくない。
こんな関係、ありなのかな。
「イチゴミルク、いらないの?」
「……いる!」
「うん、買ってあげるね」
そう言って、式見はテリヤキバーガーの包み紙をはがしはじめた。
春になると咲く『シキミ』っていう可愛い花があるらしい。
シキミの実には猛毒があるんだって。だからなのか、シキミの花の花言葉は『猛毒』。
そして、もう一つ。それは、『甘い誘惑』。
シキミは可愛らしい花をつける。それが独特の強い香りを放つことから、神聖な樹木として、神仏に備えられているんだって。
式見木蓮にぴったりの花言葉。
私たちの関係は、毒と解毒剤で出来ているのかもしれない。
これからも、ずっと。
おわり



