イジワル幼なじみが「友達だからいいでしょ?」っていいながら、めちゃくちゃ溺愛してくるんですけど!?

 柳原くんは、お兄さんと少し話をしてから帰ると言った。
 なので、帰り道は私と式見の二人だけだった。
 でも、珍しく式見は私に話しかけてこなかった。
 電車のなかでも、最寄り駅でも。
 式見は黙ったままだった。
 たまに、こっちを見ている視線を感じるけど。
 でも、私も何も言わなかった。
 言えなかったんだ。 
 だって、何を言えばいいのかわからない。
 あの時、なんで戻ってきたの。私のこと置いて来ちゃったからって、どういうことなの。
 これまで、ずっといじわるなことばっかり言われてきた。
 でも、たまに妙に優しかったりした。
 式見のことがわからないんだよ。
 何を考えているのか、わからない。
 式見。本当は私のこと、どう思ってるの。
 はっきり、聞きたい。きっぱりと言ってもらった方が、すっきりする。
 もう、これ以上もやもやしたくない。
 これは、私の方から式見に話しかけたほうがいいよね。
 よし、もう今聞いちゃおう!
「あのさ、式見」
 人一人分あけて私の横を歩く、式見の足がぴた、と止まる。
「ちょっと、そこの公園で話さない」
 保育園の頃、休みの日に親に連れられて行った公演。
 そこにちょうど式見もお母さんと来ていて、よく二人でいっしょになって遊んだ。
 あのころは、まだ楽しかったな。
 式見も、今よりは可愛げがあったし。
「何、話すの?」
「いいでしょ。ちょっとだけ」
「ちょっとだけなら、ここでいいでしょ」
「いや、落ち着いて話したいから」
「なんで落ち着く必要があるの? 落ち着く必要が話題って何?」
「ああ、もう。めんどくさいな」
 いつのまに、こんなわけのわかんない人間に育っちゃったのかな。
 でも、式見も私に対して同じこと思ってるのかもしれないよね。
 〝保育園の頃の方が、よかった〟なんて。
 だとしたら、ちょっと寂しいかも……知れない。
「大事な話をするから、来てって言ってるの」
「どれだけ大事なの?」
「……この話したら、もう式見とは友達でいられないかもしてないから、大事……かな」
「ふうん」
 とたん、式見の瞳がスッと細められた。
 今、何を考えてるんだろう。
 でももう、もやもやしたくない。
 言うしかない。
 〝式見って、私のことどう思ってる?〟って。