イジワル幼なじみが「友達だからいいでしょ?」っていいながら、めちゃくちゃ溺愛してくるんですけど!?

 スタジオに入ると、そこにはカメラマンや衣装と言ったたくさんのスタッフさんたちがいた。
 わあ、きらきらしてるなあ。これが、雑誌作りの現場なのか。
 私今からここで、モデルをさせてもらうんだ。
「百里ちゃん。紹介するよ。今日、いっしょに撮る子」
「え?」
 誰かといっしょに撮るんだ。
 よく考えたら、そりゃそうだよね。
 素人の私ひとりだけ載っても、需要ないよね。
 わかってた、わかってたもーん。落ち込むなんて、十年早いぞ、私。
 お兄さんに連れてこられたのは、同い年くらいの男の子だった。
「小林竜胆くん。百里ちゃんと同じ読モ。彼も最近始めたばかりなんだ。ほとんど同期だから、よろしくね」
「よろしく。竜胆って呼んでねー」
 人懐っこい笑顔で、手を差し出してくる。
 なんか、すごくフレンドリーな人だな。
「えっと、小林くんじゃダメ? まだ会ったばかりだし」
「俺、苗字きらいなんだよね。めっちゃ普通じゃん」
「いや、いいと思うよ。小林」
 小林一茶とか、教科書で見たことあるし、有名人にも小林はいっぱいいるじゃん。
 本人がきらいなら、しょうがないと思うけど。
「とにかく会ったばっかりだし、私は小林くんって呼ぶから」
「うわ、こんな融通きかないやついるんだ」
「融通きかないのはどっちよ」
 なんか式見みたいだな、この人。
 何でも自分の思い通りになると思ってんの?
 たしかに小林くんも式見とは違ったタイプのイケメンだ。
 ふわふわのパーマをかけた栗色の髪に、きれいな肌。まん丸の瞳。
 可愛い猫系男子って感じ。
 でもやっぱり性格はサイアクだったけど。
「じゃあ、二人とも衣裳部屋で準備入ってね」
「はーい」
 お兄さんの指示で、私と小林くんはそれぞれの衣裳部屋に入って行った。
 いよいよかあ。
 これから、どうなるんだろう。
 式見はもう、最寄りの駅に着いたころかな。
 何でこんな時にケンカなんてしちゃったんだろう。