「…なにやってんすか」
クリスマスイブから数日経ったある日
あと2日で今年も終わる。
「彼氏くん、バイトだったんだなー。待ちくたびれたわ」
「誰も待ってって言ってませんけど」
なんでこんな年の瀬に、必要以上にコイツに会わないといけないのか。
バイトから帰ると家の前に龍弥がしゃがんでいた。
「帰ってください」
「冷たくね!?俺ずっと待ってたのに!」
「何も用事ありませんから」
「俺があんだよ!」
あ〜めんどくせー。
「コーヒーでいいですか?」
「冷たいのねー」
は?こんな寒いのにアイス?
てか
「用が済んだら一刻も早く帰ってください」
結局家にあげてしまってるぼく。
「…悪かったよ」
アイスコーヒーを入れたグラスを机の上に置こうとした時、少し小さく謝る声が聞こえた。
「…は……?」
「いや、、だから悪かったって」
「なにがですか?」
どうやら聞き間違いではなく、ぼくに謝っているようだ。
「なんつーか…詩と別れるように色々嫌なこと…言ったなぁって…」
一瞬、思考が停止した。
「あんなことで別れるとかありえませんから」
今出来る必死の虚勢。
「偉い自信だなー。まぁ、俺が詩を好きなのは変わらねーし諦める気もねーし」
「ぼくが詩先輩と別れるなんてありえないから」
「さすがストーカーくん」
「何とでも言ってください」
謝らないといけないのは、ぼくの方。
なのに、言葉が出ない。
「てか、何の心変わりですか?怖いわ」
ほら、こんな憎たらしい言葉しか出てこない。
「俺、今もお前嫌いだよ」
「知ってます」
「でも、大好きな詩の好きな奴だから…せめて嫌いじゃなくなる努力をしようと思って」
思いもよらない龍弥の言葉に、目を見開いてしまった。
「好きな子の幸せっつーの?…それが俺にとっても1番だなって考えるようになったんだよ」
まっすぐな龍弥の言葉に言葉が出ない。
「今更かもだけど…好きな子、泣かせてばっかだなって思ってさ」
きっと詩先輩は、こんな人と一緒になった方が幸せなんだ
絶対に
【好きな子の幸せ】
その言葉が頭の中を駆け巡る。
「あー!なんかくせー事言った気がする!帰るわ!」
ガタッ
いきなり叫んだかと思えば、立ち上がって玄関に行く龍弥。
「じゃーな。急に来て悪かったな」
「2度と来ないでください」
ぼくの言葉を聞いた龍弥はフッと笑って
「やっぱお前嫌い」
そう言って帰っていった。
感じないようにしてきた感覚なのに
詩先輩と再会してからおかしい。
なんでこんなに胸が痛くなるんだろう。
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「想汰くん、バイト終わり迎えに行くからそのままウチ寄らない?」
「夜にひとりで歩かせるのは心配だから、家で待っててください。先輩の家寄りますね?」
「心配とかいらないよ!想汰くんより年上なんだから」
30日の朝、朝ご飯に手作りのおにぎりを持ってきてくれた先輩。
どんだけかわいいの。
「そんなの関係ないよ。他の奴が先輩を見るだけでムカつくのに」
かわいい先輩の頬に触れる。
「な、なにバカな事言ってるの!?」
ほら、すぐ顔を真っ赤にする。
「だって先輩かわいいから」
あ、さらに赤くなった。
ヤバイな…
「んー…」
これからバイトなのに、このまま先輩を抱きたい。
キスだけで満足できる気がしない。
「ねぇ先輩…ギリギリまでキスしていい?」
「…うん、してほしい」
ほら、煽るでしょ?
あー
縛りつけて
ずっとぼくのそばから離れられないようにできたら
どんなに幸せなんだろう
赤く火照った頬
ぼくを見るとろんとした甘い瞳
ぜんぶぜんぶ
ぼくのもの
なのに
「…もう、バイト行かなきゃ」
この
怖い感覚はなんなんだろう
ぼくの見ていた先輩との未来は
これで合ってるの?



