（何で泣いてるんだろう……。これ、理由を訊いてもいいのかな。う〜ん……）

ロメオの頭の中には、かつて付き合った日本人女性の言葉が渦巻いていた。元カノに「空気読めないのね！！」と言われて振られてしまったことがあったのだ。

ロメオは幼い頃から日本に住みたいと思っていた。美しい着物を着た女性の写真を見たことがきっかけである。日本人はこんな綺麗な衣装を着るのかと、ロメオは胸を高鳴らせた。彼は一目で日本文化に恋をしたのである。

日本語を勉強し、日本に移住して働き始めたのだが、空気を読むという独特の文化にロメオは戸惑った。そして、当時付き合っていた元カノとデートに行った際、彼女が終始無言で苛立っている様子だったので、「怒ってる？」と訊いたのだ。すると元カノは大声を上げた。

『怒ってるって見たらわかるでしょ！？空気読めないのね！！もう別れましょ！！』

そのことがショックでしばらくロメオは恋人を作れなかった。しかし、三年前の夏に近所で開催された祭りに出掛けた際、浴衣姿で歩く早梅を見かけた。その瞬間、彼は一目惚れをしてしまったのだ。

『Ciao！可愛いお嬢さん。よかったら一緒にお祭り回りませんか？』