医師の手元からカタカタとキーボードを打つ音が響く中、紗良の脇で看護師がそっと体を支えた。
「おそらくインフルエンザと思われます。検査結果が出るまで、少しお待ちください」
そう告げた医師は、モニターに目を落としながらも、ちらりと紗良に視線を向けた。
「熱が高いので、点滴を入れて今日はおしまいとなります」
「ありがとうございます……」と紗良が小さく礼を言うと、看護師がやさしい声で続けた。
「隣の病室に移動して、点滴を始めますね」
その頃には橘が再び紗良のほうへ体を向けており、手首にある通信機器に短く何かを呟く。
少しして、ドアから控えめなノック音が響き、旗野が静かに姿を現す。
「3番、クリアです」と橘に伝えると、同時に看護師へと合図のような視線を送った。
一連の動作は無駄がなく、どこか訓練されたものに見えた。
(きっと、この病院のスタッフたちは慣れているのだ)と、紗良は思った。
自分のような立場の人間――“警護対象者”に対して、特別な扱いをすることに。
部屋の移動ひとつとっても、SPの配置、動線、タイミングすべてが流れるようで、完璧だった。
ごく自然に、けれど確実に、自分は守られている。
そう強く感じた瞬間、紗良の中に、少しだけ安心という名の温度が灯った。
この環境にいていいのかという不安のすき間に、それはそっと染み込んでいくようだった。
「おそらくインフルエンザと思われます。検査結果が出るまで、少しお待ちください」
そう告げた医師は、モニターに目を落としながらも、ちらりと紗良に視線を向けた。
「熱が高いので、点滴を入れて今日はおしまいとなります」
「ありがとうございます……」と紗良が小さく礼を言うと、看護師がやさしい声で続けた。
「隣の病室に移動して、点滴を始めますね」
その頃には橘が再び紗良のほうへ体を向けており、手首にある通信機器に短く何かを呟く。
少しして、ドアから控えめなノック音が響き、旗野が静かに姿を現す。
「3番、クリアです」と橘に伝えると、同時に看護師へと合図のような視線を送った。
一連の動作は無駄がなく、どこか訓練されたものに見えた。
(きっと、この病院のスタッフたちは慣れているのだ)と、紗良は思った。
自分のような立場の人間――“警護対象者”に対して、特別な扱いをすることに。
部屋の移動ひとつとっても、SPの配置、動線、タイミングすべてが流れるようで、完璧だった。
ごく自然に、けれど確実に、自分は守られている。
そう強く感じた瞬間、紗良の中に、少しだけ安心という名の温度が灯った。
この環境にいていいのかという不安のすき間に、それはそっと染み込んでいくようだった。



