病院に到着すると、
橘と旗野は紗良を人目の少ない通用口へと誘導した。
正門の賑わいや視線とは無縁の、静かな裏手の入口。ひんやりとした空気と、白い壁が無言で出迎える。
そのまま旗野の先導で通されたのは、
一般の診察室とは異なる、
どこか異質な個室だった。
白いシーツに整えられたベッド。
壁際には丸い椅子と、
パソコンとモニターが置かれている。
天井の照明はやや柔らかく、
病院特有の無機質さというよりは、まるでホテルの一室を診察室に改装したような雰囲気があった。
(ここも……病院なんだ)
そんな半信半疑のまま、橘に促されて紗良は丸い椅子に腰を下ろす。
背もたれがないせいか、背筋が自然と伸び、体の重さがより強く感じられた。
旗野は部屋の四隅を一度丁寧に見回すと、無言で診察室の外へ出ていく。
扉が静かに閉まり、室内には紗良の浅く荒い呼吸と、時折こみ上げる咳の音だけが残された。
この部屋の静けさが、かえって不安を増幅させる。
咳を一つこらえてから、紗良は椅子の向きを少し回し、背後に立つ橘を見上げた。
橘は、彼女の視線には気づいていないかのように、まっすぐに正面を見据えていた。
微動だにせず、そこにある「任務」にだけ集中しているような姿だった。
「すぐに医師が参りますので、少々お待ちください」
低く落ち着いた声が、空間に溶け込むように響いた。
紗良は返事をする余裕もなく、ただぼんやりと頷く代わりに、視線を床へ落とした。
脈打つような頭痛と、胸元に広がるひりつくような熱。
どこに意識を置いても不快感がつきまとう。
目を閉じようとしても、閉じた瞬間に意識が遠のきそうで怖かった。
(病院に来られて良かった。でも、私……今、変な風に見えてないだろうか)
そんな不安と、言葉にできない安心感が交錯しながら、診察室の扉の向こうで誰かが歩く足音が聞こえた。
橘と旗野は紗良を人目の少ない通用口へと誘導した。
正門の賑わいや視線とは無縁の、静かな裏手の入口。ひんやりとした空気と、白い壁が無言で出迎える。
そのまま旗野の先導で通されたのは、
一般の診察室とは異なる、
どこか異質な個室だった。
白いシーツに整えられたベッド。
壁際には丸い椅子と、
パソコンとモニターが置かれている。
天井の照明はやや柔らかく、
病院特有の無機質さというよりは、まるでホテルの一室を診察室に改装したような雰囲気があった。
(ここも……病院なんだ)
そんな半信半疑のまま、橘に促されて紗良は丸い椅子に腰を下ろす。
背もたれがないせいか、背筋が自然と伸び、体の重さがより強く感じられた。
旗野は部屋の四隅を一度丁寧に見回すと、無言で診察室の外へ出ていく。
扉が静かに閉まり、室内には紗良の浅く荒い呼吸と、時折こみ上げる咳の音だけが残された。
この部屋の静けさが、かえって不安を増幅させる。
咳を一つこらえてから、紗良は椅子の向きを少し回し、背後に立つ橘を見上げた。
橘は、彼女の視線には気づいていないかのように、まっすぐに正面を見据えていた。
微動だにせず、そこにある「任務」にだけ集中しているような姿だった。
「すぐに医師が参りますので、少々お待ちください」
低く落ち着いた声が、空間に溶け込むように響いた。
紗良は返事をする余裕もなく、ただぼんやりと頷く代わりに、視線を床へ落とした。
脈打つような頭痛と、胸元に広がるひりつくような熱。
どこに意識を置いても不快感がつきまとう。
目を閉じようとしても、閉じた瞬間に意識が遠のきそうで怖かった。
(病院に来られて良かった。でも、私……今、変な風に見えてないだろうか)
そんな不安と、言葉にできない安心感が交錯しながら、診察室の扉の向こうで誰かが歩く足音が聞こえた。



