その相手、小出充悟から電話がかかってくると言うので。
夜、晴乃は自室で電話を待っていた。
ソファに座り、ライトアップされた夜の庭を眺めていると、コンコンと誰かが部屋の扉をノックした。
どうぞ、と言い終わらないうちに、杏奈が入ってくる。
「タダ飯ぐらいのおねえさま。
お義父様の持ってきたお話、断ったんですって?」
「だって、おじいさんなんでしょ? 相手」
「おじいさんだって、やさしいかもしれないわよ。
やさしい人が一番よ、旦那さんは」
と言いながら、杏奈は晴乃の膝に、よいしょ、と乗ってくる。
もうすぐ五年生になろうかというのに甘えん坊だ。
杏奈は実の父親について、なにも語らないが、厳しい人だったのかなと思う。
「おねえさま、家を出て行っても、杏奈に勉強教えに来てくれてもいいのよ」
と言う杏奈の手には、しっかり宿題のテキストが握られている。
杏奈は名門私立に通っているが、成績は、まずまず、と言ったところのようだった。
「しょうがないなあ。
何処から何処まで」



