「あら、もう帰ってきたの?
なんとかってうさぎのケーキの男と泊まってくるんじゃなかったの?」
と早朝、リビングでスマホを見ていた晴乃に望都子が言ってきた。
一応、望都子たちには連絡してあったのだ。
――ケーキの男って、充悟さんが料理人かなにかにみたいになってますが……。
「もう喧嘩別れ?」
「いえ、付き合ってるわけではないですし。
本館と別館で別々に泊まりましたから」
腕組みして晴乃の前に立つ望都子は眉をひそめて言う。
「その男は莫迦なの?」
仕事を思い出して早く帰ってきたのだと言うと、
「なんかいろいろ残念な人ね。
イケメンで仕事できるみたいだけど、あなたくらいしか相手いないかも。
まあ、もてあそばれて捨てられたんじゃないならよかったわ。
そんなことがあったら、我が家の名折れですもんね」
と望都子は言う。
「……次の約束とかしたの?」
「次の約束とかじゃないですけど」
とスマホを見たまま、晴乃は、ふふ、と笑う。



