運転手さんがタヌキだったのか、そうじゃなかったのかわからないが、とりあえず、バスは山の上のあの台湾菓子の喫茶店に着いた。
「わあ、やっぱり素敵ですね」
夜は喫茶店ではなく、お酒も出すお店になるらしく、バスはもうないのに、結構人がいた。
昼間は灯りのともっていなかった四角い提灯に火が入っている。
それが軒下にずらりと並んでいるさまが、幻想的でいい。
テラス席に通され、昼間より冷たい風を浴びながら、晴乃は下の街を眺めた。
「予想通りのいい雰囲気ですね。
それにしても、こんな不便な山の中なのに。
ここにいる大量の人たちは何処から湧いてきて、何処へ帰っていくんでしょう」
「車が結構とまってたぞ。
呑んでないメンバーがいるか、代行じゃないか?
っていうか、お前のタヌキ発言のせいで、ここの店主も客たちも。
ここを出たら、巣に帰るんじゃないか、とか思ってしまうじゃないか」
いつぞやの『うさぎは入っていません』の若い男の店員さんが近くにいて、充悟のセリフが聞こえたらしく、笑っていた。
「近くにあるホテルから、ここまでバスが出てるんですよ」
うさぎの店員さんが、もうちょっと山の上にある明るい建物を指差し、教えてくれる。



