幼なじみが連れてきた結婚相手がすごい俺様だった話

「あ、でも、あの方々は、小洒落た甘い物を与えておくと、しばらくおとなしくしてますから」

「……義理の家族を珍獣扱いか」

「生活の知恵です」

「お前はシンデレラにはなれんな……。
 王子も現れないだろう」

「シンデレラですか~。
 あ、でも、たまには掃除もしますよ。

 ――自分の部屋の」

「自分の部屋の掃除をするのは、シンデレラとかいう話じゃなくて。
 生きてく上で必要な、人としての義務だろ」
と充悟がキレる。

 ……気が短いな、この人。

 もう乗ってる人、ほとんどいなくてよかった、と思いながら、晴乃はどんどん山を上がって灯りがなくなっていく道を見る。

 ガードレールの向こうは鬱蒼とした森だ。

「なんかタヌキに化かされそうですね。

 たどり着いた場所にあるのは、夜景の綺麗な店じゃなくて、山の中のあばら屋だったり――」

「待て。
 その想定だと、あの運転手さんもタヌキだということになってしまうぞ」

 充悟が言った瞬間、運転席の方から小さく吹き出す声が聞こえた。