途中、晴乃はお手洗いに立ったのだが。
戻ってきたとき、何処か自分の席だったか、わからなくなってしまった。
……困ったな。
子どもの頃、旅館で迷ったときみたいになってしまったぞ。
ずらりと並んだ障子の前をウロウロしていると、店員さんが声をかけてくれようとした。
だが、そのとき、真ん中辺の障子が開き、何処かで見た顔が覗いた。
「晴乃。
やっぱり、迷ったな」
充悟だった。
「お前の帰ってくるところは、ここだぞ」
「ありがとうございます。
ありがとうございます」
晴乃は充悟と店員さんに選挙活動のように頭を下げ、座敷に上がる。
「かなり呑んだろ。
水、もらっといてやったから」
「ありがとうございますっ」
晴乃は、ぐぐっとそれを飲んで言った。



