幼なじみが連れてきた結婚相手がすごい俺様だった話

「そういえば、いつだったか、走ってたら、いつもとなにかが違うなと思ったんだよ。

 同じ道、同じペースで走ってるのに」

「猫町みたいですね」

 萩原朔太郎の猫町が好きだ。

 いつもの町が、ふいに何処か違って見えると、あの話を思い出す。

「いや、そんな高尚な話じゃない」

 走ってるうちに、気づいたんだ、と充悟は言った。

「いつもと違って、全部の信号が点滅していると。

 いつも通り、五時半に走り出したつもりだったんだが、四時半だったんだ!」

「そんな時間に平然と起きて走ってる人の朝食は用意できません……」
と晴乃は青ざめる。

「俺だって、奴隷を五十人は用意できないぞ」

 抽選で五十人に、ですよ、と思いながら、とりあえず、冷酒の呑みくらべセットとホッケは頼むことにした。

「奴隷の人を雇うと、苦手な紅茶とか飲まねばならなくなるので困りますよね」

「なんだそれはお前の家の儀式か」

 いえいえ、と写真通り立派だったホッケをつつきながら、晴乃は言う。