……クマ、いないみたいなんだけど、と晴乃は充悟が見た木々が立ち並んでいる斜面を見る。
車に向かって歩きながら、
「そういえば、うちの車、ときどき、何故かチャイルドロックが勝手にかかるんですよね~」
と言った。
「それで、いつも降りられなくなって、お義母さまたちに、鈍臭いわねって言われるんですけど。
かけた覚えないんですけど。
壊れてるんですかね?」
と晴乃は首をひねる。
「ドアを開けようとするお前の手が子供みたいだから、チャイルドロックがかかるとかなんじゃないのか」
そう笑いながら、充悟は晴乃の手首をつかんだ。
やめてください。
どきりとしてしまうではないですか、と思ったが、充悟も、ついつかんだだけだったようで、赤くなって離そうとした。
だが、何故か、離さずにマジマジと晴乃の手を見て、言う。
「デカいな……」
「えっ?」
「細くて綺麗だが。
俺より大きいんじゃないか?
お前、俺より生活力があるんじゃないのか……?」
手が大きい方が生活力があるという俗説があるからだろう。
……もっと可愛い手ならよかったな、と思ってしまった。
いや、別に。
「お前、俺がいなくても大丈夫そうだな」
と言われそうで嫌だったからというわけではないのだが――。



