「やだ、なんでもう帰ってきたの?
今、運転手に迎えに行かせるところだったのに」
玄関ホールにいたタイトなワンピースの女が片腰に手をやり、そんなことを言う。
「……誰だ?」
「母です」
「誰の?」
「私のです」
「なんでここにいるんだ?」
「回覧板届けに来たのよ」
と言ったのは、晴乃ではなく、母、西子だった。
「なんでこんな時間に回覧板届けに来てるんですかっ」
「忘れてたのよ、ほら。
11日までに回し終われって書いてあるじゃない」
西子の後ろに現れた着物姿の望都子が言う。
「なんで今、持ってくるんですかっ。
これから出勤なのにっ」
と望都子は、その回覧板をつかんだ。



