苦しいのは、君が笑うから

 君との会話、君が見せてくれた絵、私の拙いイラスト。

 君はどれくらい覚えてるんだろうね。
 ……私は、少ししか覚えてないよ。


 君が書き始めたとか言って見せてきた小説だって、登場人物の名前も、タイトルも、細かい内容も、全部ぼんやりとしか思い出せない。



 私にとって、何よりも大切なものだったのに。
 全部忘れないように、かつて心の奥に深く深く刻み込んだはずなのに。


 時間が経てば経つほど、記憶の中の君は霞んでいく。





 君の書いた小説は、ありがちなラブストーリーだったっけ。


 君の好きだった余命ものだったような気もするし、実は周囲の人との関係改善がメインだったような気もする。

 転生要素もあったような。
 いや、それは別のだったかな。


 またひとつ思い出してしまう度、胸がちくりと痛む。

 昨日作った染みの上に、また新たな染みが出来ていく。


 思い出したくなかった。このまま忘れていたかった。
 君のことを忘れている間は心が空っぽだけど、こんなにも苦しくはないから。



 
 ねぇ。教えてよ。
 
 君はさ、どうして私の前から居なくなったの?