苦しいのは、君が笑うから

 幸せな悪夢を見た。


 それは、もう戻ることのない、暖かい過去の記憶だった。
 まだ、君と親友だって胸を張って言えた頃の孤独な夢。


「お誕生日おめでとう」
「覚えててくれたの…!?」
「大好きな親友の誕生日だし、当たり前だよ」
「私も大好き……」
「あはは、じゃあ両思いだね」
「両思い!?えー、嬉しいな」


 君が、惜しまずくれる「大好き」の一言が好きだった。

 君が好きだと言ってくれる度に、大切な親友だって笑ってくれる度にね、私は幸せだったんだよ。



 君も私と同じ気持ちだって思ってた。
 でも、君はきっと──。

 



 そこで目が覚めた。


「ふぁー、」


 大きく伸びをしながら、そっと辺りを見回す。

 見覚えしかない勉強机、絨毯の上に散らばった薄紫の封筒と開かれたままの便箋……あ、これ私の部屋だ。

 もしかしなくても、昨日大泣きした後、寝落ちしたのだろう。

 
 カーテンの隙間から差し込む光は、まだ弱々しくて、今が早朝であることが伺えた。