苦しいのは、君が笑うから




「ううっ……」

 
 君には幸せになって欲しい。
 たとえ私が隣に居なくても、笑っててくれればそれでいい。


 君が望むのが、あの子の側なら、私は喜んで身を引く。



 そう思うのに。


 君の隣は、絶対に私がいい。あの子には、君を幸せになんて出来っこない。

 ねぇ、私にしてよ。いつか話してた他の人とは違って、私なら一生後悔なんてさせないから。


「…うっ、うわぁぁーん」


 どうして、私の口から溢れるのは、醜い感情ばかりなのだろう。
 せめて、口先だけでも君の幸せを願いたかった。
 


 こんなぐちゃぐちゃな自分も、私を救ったくせに、もう一度孤独に突き落としてきた君も、いつかの私みたいに、嬉しそうに笑うあの子も嫌いだ。
 

 みんな許せないし、みんなみんな大嫌いだ。

 

 そう。みんな、大嫌い。

 ぽたり、と私の目からは再び涙が流れる。


「あいたい、よ……」
 
 
 雪のように、流れ星のように、一瞬で、溶けて消えた、この想いも、君は。


「君は、想像すら、しないん、だろうな…」


 眠気に誘われるまま、私は目を閉じる。
 目尻はまだ、乾きそうになかった。