「そうなの?えー、めっちゃ見たい…!!」
「じゃあ……ちょっとだけなら。特別だよ?」


 普段は相手が誰であろうと、人に自分の絵を見せることはなかった。
 それなのに、出会ったばかりの君には簡単に見せられたのはどうしてだろう。
 

「いいの?ありがとう」

 

 この日の些細な会話をきっかけに、私と君はどんどん仲良くなっていった。



「あ、そうだ!昨日ね、また新しい絵描いたんだ。見てくれる?」
「もちろん」
「わーい、ありがとう!」


 私が緊張しながらも尋ねると、君は当たり前だと言うように頷いてくれる。

 秘密主義だった私が、ずっと隠してきた事を全部いとも簡単に暴いてしまうような、その仕草が好きだった。
 

「やっぱ上手だなぁ……。今回も素晴らしい神絵、本当にごちそうさまでした」


 君がいつも弾ける笑顔と共に、そんな言葉をくれるから、私は自分の絵に少しだけ自信が持てるようになった。
 
 
「えへ、そんな褒めても何も出てこないよ〜」
「それはどうだか」
「…んぇ?」


 思わず間抜けな声を出してしまった私が眩しいとでも言うかのように、目を細めた君はこんな言葉を放った。
 

「ほら、君の笑顔を引き出せたからね」


 君の言葉ひとつひとつが好きで、嬉しくて、大切で。


 君は私を照らしてくれる光で、私の狭い世界の真ん中で。

 それは今でも変わらない。


 
 でも。


 私は君の親友だからってほんの小さな理由一つで、これからもずっと側に居られると、君の隣はずっと私だけだと信じて疑わなかった。

 君がそんな約束をしてくれたことは、なかったというのに。
 

 
 それでも、少なくともあの頃は、本気でそう思い込んでいた。