苦しいのは、君が笑うから


「そう、その感じ。あんたはやっぱり笑ってる方がいいよ」
「…え?」

 私が爆笑したことで、クラスメイトは安心した様子だった。
 周囲から浮くレベルで暗い顔をしていたから、気にかけてくれたのだと思う。


 なんだか、君みたいだ。

 無責任に私を救って、笑顔が似合う、なんてさ。
 私が落ち込んでいたら、無理してでも笑わせてくれるところまでそっくり。
 
 周囲の人全員と縁を切った君も、そんな君に今でも焦がれている私も、きっとどうかしている。

 
 もう、全てが手遅れであることは分かっているけど。


 物想いに耽る私をよそに、クラスメイトは続ける。
 

「他のみんなも、落ち込んでる人いるよね。もしかしてあんたも失恋?」

 そういえば、さっき彼氏に振られたと話している人がいた。恋人たちのイベントとも呼ばれるバレンタイン間近に、恋人と別れることになった彼女に、今なら少しだけ同情できた。
 
「…どうだったんだろうね」
  

 
『会えなくても、どこかで君のことを見てるよ』

 いつかの約束を、君がまだ覚えているのなら。

 今度は、目を逸らさずに聞いてね。

 

 君が私の世界に入り込んできた日、君が笑ったから。
 私は、あの日からずっと苦しいよ。