苦しいのは、君が笑うから


「ねぇ、今ちょっと時間いい?」
「うん。大丈夫だけど」

 ふいに上から声が降ってきた。無視することも出来ずに、私は正直に頷いた。


 関わったこともない人だが、一体何の用だろうか。
 たぶんクラスメイトだと思うけれど、そもそも誰だろうか。


「この写真、見て欲しいんだ」


 その人がおもむろに差し出したスマホの画面には、1枚の写真が表示されていた。

 どう考えてもおかしな形をした、コミカルな表情の人形。

 ネタとして作られたであろうそれに、私は思わず吹き出してしまった。


「あははっ、何これ!」
「ね!面白いでしょ!??」
「うん…ふふ、お腹痛くなってきた」

 目尻に浮かんだ涙を拭いながら、ふと思った。最後に笑ったのなんて、いつぶりだっただろう──。

 君が居た頃は、些細なことで笑っていたから、その時以来だと思う。

 不思議だよね。君が笑っただけで、どんなことも、世界で1番面白いことのように感じたんだから。
 

 それこそが人々が君に惹かれた理由、君の持つオーラってやつだったのだろうか。