あの日。
 私が今まで生きてきた世界の色が、一瞬で変わった日。
 

 全ての元凶でもある君は、私の世界に突然現れた。



「ねぇ、それなにー?」


 始まりはそんな一言だったと思う。
 人懐っこい君のことだから、間違いなく純粋な興味で聞いたのだろう。

 この言葉が後の私を大きく変えた、なんてきっと君は知らないよね。
 

「わ、びっくりした。んーと、イラスト…かな」
「え、もしかして自分で描いたの?」
「…うん。実は私ね、絵描くの好きなんだ」


 素直じゃない私は、自分が絵を描くことが好きだと、胸を張って言えない。
 
 それでも、久しぶりに家族以外の人と話せたのが嬉しくて、詰まりながらもなんとか口にする。


 自分の趣味を話すことへの葛藤は、はしゃいだ君の笑顔によって、一瞬で吹き飛ばされた。