苦しいのは、君が笑うから


 その日は、あまりにも突然に訪れた。

 君と出会った日によく似た、馬鹿みたいに空の青い日だった。



 携帯の機種変をしてから、最初の水曜日。
 1週間の真ん中でもあり、1ヶ月のラストスパートのこの日は、やっぱり辛くて、疲れてしまって。


 私が縋るように()()()()()()のは、お守りがわりの君との会話履歴だった。


「あ、れ…?」

 でも。

「ない………?」


 そう。なかったのだ。君とのこれまでの会話履歴も、全部。

 君と話す手段はおろか、思い出を振り返る方法すら失ったのだ。
 受け入れがたいその事実に気づいてしまい、心臓のあたりが、サーっと冷たくなっていく。 

 頭の中はパニックで真っ白になっているはずなのに、どこか冷静な自分がいた。

 
 ──ああ、私は、バックアップに失敗したんだ。きっと、君からも、天からも見放されたんだ。