カップを片づけ終えたあと、ふたりは玄関の前に並んだ。
「……もう、帰らないといけませんね」
美香奈がそう言うと、神谷は小さく頷いた。
「はい。そろそろ失礼します。……でも」
そこで言葉を切ると、彼は内ポケットからスマートフォンを取り出した。
「橋口さん。……この連絡先、登録しておいてもらえませんか」
画面には、個人用の名刺画像とともに、連絡先のQRコードが表示されていた。
「え……でも、個人的な連絡って、警察の立場では……」
「本来なら、そうです。
捜査関係者と私的な連絡を取り合うのは、推奨されません。
でも……万が一、君が“今すぐ助けが必要だ”と思ったときに、
組織を通すより、直接僕に連絡できた方がいいと判断しました」
その声は低く、穏やかだった。
「勤務用の端末にメッセージを残せば、それは記録として残ります。
たとえば“寂しい”とか“ありがとう”とか、
ただの気持ちの一言でも、それが別の誰かの目に触れてしまうこともある。
……そういうところまで、僕は慎重でいたいんです」
少し驚いていた美香奈だったが、
その言葉の奥にある“真剣な気持ち”を、しっかりと受け止めていた。
「……わかりました。
じゃあ、私のも登録してください」
お互いに、画面を交換して、
手のひらの中で“つながる音”が鳴る。
それは、恋人のような甘い儀式ではなかったかもしれない。
でも、
確かにふたりの関係が“信頼”を越えて、
“想い”へと歩みを始めた瞬間だった。
「……もう少しだけ、待っててください。
事件が片付いたら、きちんと……あなたに会いたいと思ってます」
「待ちます。どれだけでも」
最後に視線を交わして、神谷はそっと微笑んだ。
その笑顔は、静かで深く、胸に残るものだった。
そして、彼は玄関のドアをゆっくりと閉めていった。
「……もう、帰らないといけませんね」
美香奈がそう言うと、神谷は小さく頷いた。
「はい。そろそろ失礼します。……でも」
そこで言葉を切ると、彼は内ポケットからスマートフォンを取り出した。
「橋口さん。……この連絡先、登録しておいてもらえませんか」
画面には、個人用の名刺画像とともに、連絡先のQRコードが表示されていた。
「え……でも、個人的な連絡って、警察の立場では……」
「本来なら、そうです。
捜査関係者と私的な連絡を取り合うのは、推奨されません。
でも……万が一、君が“今すぐ助けが必要だ”と思ったときに、
組織を通すより、直接僕に連絡できた方がいいと判断しました」
その声は低く、穏やかだった。
「勤務用の端末にメッセージを残せば、それは記録として残ります。
たとえば“寂しい”とか“ありがとう”とか、
ただの気持ちの一言でも、それが別の誰かの目に触れてしまうこともある。
……そういうところまで、僕は慎重でいたいんです」
少し驚いていた美香奈だったが、
その言葉の奥にある“真剣な気持ち”を、しっかりと受け止めていた。
「……わかりました。
じゃあ、私のも登録してください」
お互いに、画面を交換して、
手のひらの中で“つながる音”が鳴る。
それは、恋人のような甘い儀式ではなかったかもしれない。
でも、
確かにふたりの関係が“信頼”を越えて、
“想い”へと歩みを始めた瞬間だった。
「……もう少しだけ、待っててください。
事件が片付いたら、きちんと……あなたに会いたいと思ってます」
「待ちます。どれだけでも」
最後に視線を交わして、神谷はそっと微笑んだ。
その笑顔は、静かで深く、胸に残るものだった。
そして、彼は玄関のドアをゆっくりと閉めていった。



