神殺しのクロノスタシス7〜後編〜

…信じられるか?この差別。

俺とルイーシュは、今朝、山のような種類のパンや、サラダやスープや、フルーツをたらふく食べたっていうのに。

あの人達は、選択肢すら与えられず。

食べたくなくても、あの古ぼけたお店で、味気ない雑穀粥を食べるしかない。

この格差。

非魔導師なんて、雑穀粥だけ食ってりゃ充分だろw…とでも?

…そんな馬鹿な話があるかよ。

自分、さっき、「郷に入っては郷に従え」だ、って言ってたけど。

あれ、ちょっと撤回させてもらうわ。

従うったって、限度があるからな。

「…なぁ、あんたさんは、本気でそう思ってるのか?」

「はい?」

「青カード…。魔導師じゃない人には、エサでも与えておけば充分だ、って。本当にそう思ってるのか?」

「…??…はい…。…そうじゃないんですか?」

「…」

何を当たり前のことを、と言わんばかり。

「だって、彼らは『青カード』ですよ?魔法を使うことが出来ず、国家に貢献することも出来ない、人間の欠陥品です」

「…」

「この国に住まわせて、食べ物を与えてもらえるだけでも、感謝してもらわなくては」

案内人の男性は、愛想良くにこにこ笑いながら、そう言った。

成程、そう。そういうことね。

それが、このキルディリア魔王国の価値観な訳ね。

…よーく分かった。

「…腐ってんな…」

「え?」

あぁごめん、こっちの話。

「…キュレムさん。気持ちは分かりますけど」

俺が、我を失って抗弁すると思ったのか。

ルイーシュが、俺を抑えようと口を挟んだ。

ありがとうな。

確かに、ここがルーデュニア聖王国だったら。俺達の故郷だったら。

「何馬鹿なこと言ってんだ、馬鹿タレ!」と、鉄拳制裁してやったところだが。

残念ながらここは、キルディリア魔王国。

キルディリア魔王国なのだ。

…だから、俺には何も言えない。

「…そうか。説明ありがとう。よく分かったよ」

「ご理解いただけたようで、感謝致します」

…くそったれが。

「お粥を召し上がりたいなら、王宮の料理人に作らせます。『青カード』のエサなんかより、ずっと美味しい…魔導師様に相応しいものを」

「…」

「出来上がったらお持ち致しますので、お部屋で…」

「…いや。何も要らない」

食欲なんて、遥か彼方に消え失せてるに決まってるだろ。

ましてや…お粥なんて、当分見たくもない。

…お粥は何も悪くないけどな。

悪いのは、この国。

このキルディリア魔王国の、腐りきった体制だ。